「ピロリ菌の除菌薬を飲み終えたから、これでもう安心」——そう思っていらっしゃる方もいるかもしれません。
しかし、除菌治療を受けた後には、大きく分けて2つの確認があります。
一つは、本当にピロリ菌を除菌できたかを確認する「除菌判定」。もう一つは、除菌後も、ご自身の胃の状態に応じて胃カメラなどによる経過観察を続けることです。
今回は、ピロリ菌の除菌治療を受けたことがある方、あるいはこれから受ける予定の方に向けて、「除菌後になぜ検査が必要なのか」を分かりやすくお伝えします。
ピロリ菌除菌後に必要な「2つの確認」
ピロリ菌の除菌治療を受けた後には、次の2つを分けて考えることが大切です。
① 本当に除菌できたかを確認する「除菌判定」
除菌薬を決められたとおりに服用しても、必ずしも1回の治療ですべての方が除菌に成功するわけではありません。そのため、治療後にはピロリ菌がいなくなったかどうかを検査で確認する必要があります。
② 除菌後の胃の状態を継続して確認すること
そして、除菌判定で「成功」と確認できても、それまでピロリ菌感染によって胃の粘膜が受けてきた影響がすべてなくなるわけではありません。
そのため、除菌後も胃の状態や胃がんのリスクに応じて、胃カメラ(胃内視鏡検査)による経過観察を考えていくことが大切です。
なぜ「除菌判定」が必要なのか
ピロリ菌の除菌治療は、胃酸を抑える薬と抗菌薬などを一定期間服用して行います。しかし、治療を受ければ必ず除菌できるとは限らないため、薬を飲み終えただけでは「除菌成功」とは判断できません。
そこで必要になるのが「除菌判定」です。
除菌判定は、治療が終わってすぐではなく、一定期間をあけて行います。日本ヘリコバクター学会のガイドラインでは、除菌治療薬の服用終了後4~6週以降に判定を行うことが示されています。除菌判定には、尿素呼気試験や便中ピロリ菌抗原検査などが用いられます。
また、検査方法によっては、服用している胃薬などが検査結果に影響することがあります。そのため、自己判断で薬を中止せず、検査前に服用中のお薬を医師に伝えることが大切です。
過去に除菌治療を受けたものの、除菌判定を受けたか分からない、あるいは結果を確認しないままになっている方は、一度医師に確認してみましょう。
除菌に成功しても、胃がんのリスクがゼロになるわけではありません
除菌判定で「成功」という結果が出ると、「これでもう胃がんの心配はなくなった」と思われるかもしれません。
ピロリ菌を除菌することには、胃がんの発症リスクを低下させる重要な意味があります。しかし、除菌によって胃がんのリスクが完全になくなるわけではありません。
ピロリ菌は、長い期間にわたって胃の粘膜に感染することで、慢性的な炎症を引き起こします。炎症が続くと、胃の粘膜が薄く変化する「萎縮性胃炎」や、胃の粘膜の一部が腸の粘膜に似た性質に変化する「腸上皮化生」などがみられることがあります。
除菌によってピロリ菌そのものがいなくなっても、除菌するまでに胃の粘膜に生じた変化の程度は、一人ひとり異なります。
特に、除菌した時点ですでに胃粘膜の萎縮が進んでいた場合などでは、その後も胃がんのリスクを考慮する必要があります。
つまり、「除菌によって胃がんのリスクは下がる。しかし、ゼロになるわけではない」と理解しておくことが大切です。
必要以上に不安になる必要はありませんが、除菌後もご自身の胃の状態に応じた経過観察を続けていくことが重要です。
だからこそ、除菌後も胃カメラによるフォローが大切です
除菌後の胃がんリスクは、除菌前からの胃粘膜の状態などによって異なります。
胃カメラでは、胃の粘膜を直接観察し、萎縮の程度や腸上皮化生を疑う所見、胃がんなどの病変がないかを確認することができます。
そのため、除菌が成功した後も、「ピロリ菌がいなくなったから、もう胃カメラは受けなくてよい」と自己判断するのではなく、ご自身の胃の状態やリスクに応じて、必要な経過観察を続けることが大切です。
ピロリ菌を除菌してから長い期間が経過した後に胃がんが発見されることもあるため、除菌後も胃がんのリスクに応じた定期的な検査を考えていくことが重要です。
胃カメラを受ける間隔は、一人ひとり異なります
「では、除菌後は何年に1回、胃カメラを受ければよいのでしょうか?」
これは多くの方が気になるところですが、すべての方に一律の検査間隔を当てはめることはできません。
胃粘膜の萎縮の程度や腸上皮化生などの所見、これまでの内視鏡検査の結果、年齢や既往歴などを踏まえて、適切な検査間隔を考える必要があります。
そのため、「何年に1回受ければ大丈夫」と自己判断するのではなく、ご自身の胃の状態を実際に確認した医師と相談しながら、次回の胃カメラの時期を決めていくことが大切です。
こんな方は、一度医師にご相談ください
次のような方は、除菌がきちんと確認できているか、また今後どのような検査が必要かを一度確認してみましょう。
- 除菌薬を飲んだが、その後の除菌判定を受けていない
- 除菌に成功したかどうか、結果を覚えていない
- 除菌後、長期間胃カメラを受けていない
- 過去に萎縮性胃炎や腸上皮化生を指摘されたことがある
- ご家族に胃がんになった方がいる
特に、「何年も前に除菌薬を飲んだ記憶はあるけれど、その後どうしたか分からない」という方は、現在の状況を一度整理しておくとよいでしょう。
まとめ
ピロリ菌の除菌治療は、胃がんのリスクを下げ、胃の健康を守るための大切な治療です。しかし、除菌薬を飲み終えた時点ですべてが完了するわけではありません。
まずは、「除菌判定」で本当にピロリ菌がいなくなったかを確認すること。
そして除菌に成功した後も、ご自身の胃の状態や胃がんのリスクに応じて、胃カメラによる経過観察を続けること。
この2つを分けて考えることが大切です。
当院では女性医師による胃カメラ検査を行っており、ご希望や状態に応じて鎮静剤を使用した検査にも対応しています。
「除菌判定を受けたか分からない」「除菌後、しばらく胃カメラを受けていない」「次はいつ検査を受ければよいか分からない」といった場合は、お気軽にご相談ください。
