夏になると、冷たい炭酸飲料やビールなどのお酒、焼肉や揚げ物といった脂っこい料理を口にする機会が増える方も多いのではないでしょうか。加えて、夕食の時間が遅くなったり、食べてすぐに横になったりすることもあるかもしれません。こうした生活習慣が重なると、「胸やけ」や「酸っぱいものが上がってくる感じ」が起こりやすくなる場合があります。今回は、この胸やけや胃酸の逆流と、夏にみられやすい生活習慣との関係についてお話しします。
胸やけ・胃酸逆流とは
胸やけとは、胃の中の胃酸や内容物が食道へ逆流することによって起こる症状の一つで、胸の中央付近が焼けるように感じるものを指します。また、酸っぱいものや苦いものが口元まで上がってくる感覚は「呑酸(どんさん)」と呼ばれ、胸やけと合わせてよくみられる症状です。のどの違和感や咳、げっぷを伴うこともあります。
「胃の調子が悪い」と表現されることが多いのですが、実際に症状が出ている場所は食道であることも少なくありません。胃の粘膜に炎症が起こる「胃炎」と、胃の内容物が食道へ逆流することで症状が起こる「逆流性食道炎」は、異なる病気です。
夏の飲食習慣と胃酸逆流の関係
夏に増えやすい生活習慣の中には、胃酸の逆流のきっかけになり得るものがいくつかあります。
- 食べ過ぎによって胃の中の圧力が高まる
- 脂肪分の多い食事によって、胃から食べ物が排出されるまでの時間が長くなることがある
- アルコールが症状のきっかけになることがある
- 炭酸飲料によって胃が膨らみ、げっぷが増えることが症状に関係する場合がある
- 就寝直前に食事をしたり、食後すぐに横になったりすると、胃の内容物が逆流しやすくなる
冷たい飲み物については、逆流性食道炎の直接的な原因と言い切れるものではありません。ただし、人によっては飲んだ後に胸やけなどの症状を感じる場合があります。「夏になると必ず逆流性食道炎が増える」というわけではなく、飲食の内容や食事時間などが重なることで、症状が出やすくなる方がいると考えるとよいでしょう。
日常生活でできる対策
胸やけや胃酸の逆流が気になる場合は、次のような工夫が症状の軽減につながることがあります。
- 一度にたくさん食べ過ぎない
- 脂っこい食事やお酒、炭酸飲料など、ご自身の症状が出やすい飲食物を把握する
- 食後すぐに横にならない
- 可能であれば、就寝の2~3時間前までに食事を済ませる
- 夜間に症状が出やすい場合は、上半身全体を少し高くして休む
- ベルトや衣服で腹部を強く締めつけない
- 肥満傾向がある場合は、無理のない範囲で体重管理に取り組む
すべてを一律に控える必要はありません。何を食べたとき、どのような姿勢を取ったときに症状が出るのかを確認しながら、ご自身に合った範囲で調整してみてください。
消化器内科の受診を考えていただきたい場合
次のような状態が続く場合は、消化器内科への受診をご検討ください。
- 胸やけや胃酸の逆流を繰り返している
- 生活習慣を見直しても症状が改善しない
- 市販薬を繰り返し使用している
- 食べ物がつかえる、飲み込みにくいと感じる
- 飲み込むときに痛みがある
- 吐血や黒っぽい便がある
- 原因のはっきりしない体重減少や貧血を指摘された
なお、強い胸の痛みがある場合は、逆流性食道炎だけでなく、心臓や血管の病気が関係している可能性もあります。冷や汗や息苦しさを伴う胸痛、突然現れた強い胸痛がある場合は、消化器内科の通常受診を待たず、速やかに医療機関へ相談してください。
胃カメラで確認できること
胸やけが繰り返し起こる場合には、胃カメラによって食道や胃の粘膜の状態を直接確認することがあります。逆流性食道炎による粘膜の炎症の有無だけでなく、食道や胃、十二指腸にほかの病気が隠れていないかを確認することも、胃カメラの役割の一つです。
一方で、胸やけなどの症状があっても、胃カメラでは食道に明らかな炎症がみられない場合があります。そのため、胃カメラを行うかどうかや、症状の原因については、症状の内容や経過も含めて医師が総合的に判断します。
まとめ
夏は、炭酸飲料やお酒、脂っこい食事、夜遅い食事など、胸やけや胃酸の逆流に関係する飲食習慣が重なることがあります。冷たい飲み物も、人によっては症状を感じるきっかけになる場合があります。すべてを厳しく制限するのではなく、ご自身の症状と飲食内容、食事時間との関係を確認しながら調整することが大切です。症状が繰り返す場合や、飲み込みにくさなどの気になる症状がある場合は、消化器内科へご相談ください。
